世の中には、経営が上手くいっている塾とそうでない塾があります。
塾の経営で失敗してしまう原因を把握し、その対策を行うことで経営を成功に導くことができるでしょう。
そこで本記事では、塾の経営で失敗しがちな理由と、経営を成功させるためのコツを紹介します。
これから塾経営を始める方や、塾を始めたてで経営に不安がある方は参考にしてみてください。
学習塾の経営状況の現状
実際には、年間どれぐらいの塾が倒産しているのでしょうか?
まずは学習塾業界全体の傾向を把握しましょう。
学習塾の倒産件数
学習塾の倒産件数は下記のとおりとなります。
教育関連業者の倒産動向調査(負債1,000万以上、法的整理のみ)
年 | 学習塾の倒産件数 |
2010年 | 28件 |
2011年 | 16件 |
2012年 | 25件 |
2013年 | 25件 |
2014年 | 17件 |
2015年 | 25件 |
2016年 | 25件 |
2017年 | 32件 |
2018年 | 35件 |
参考:帝国データバンクhttps://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p190105.pdf
データを見ると年を追うごとに少しずつ学習塾の倒産件数が増えていることがわかります。
そのうえで直近2年のデータでは、年間30件以上の学習塾が倒産していることが見て取れます。
塾が倒産してしまう背景
塾の年間倒産件数を紹介しましたが、倒産につながる背景には一体何があるのでしょうか?
まず挙げられる背景は、少子化が進んでいるということです。
日本の出生数は、第二次ベビーブームである1971年~1974年を超えたあたりから落ち始め、2019年時点では87万人とピーク時の半分ほどになりました。
参考:厚生労働省https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/kousei/19/backdata/01-01-01-07.html
出生数の減少に伴い、全国的に児童が減っていることから、塾に通う人数も年々減少しています。
塾の倒産につながる別の背景としては、塾のIT化が挙げられます。
学習のIT化によって、授業用のタブレット端末の導入や、授業の動画配信などを始める塾が出てきました。
このような塾のIT化によって、学習形態の変化のスピードはますます加速しています。
資金不足や情報収集不足などから変化の流れについていけない塾は、生徒が離れて経営の失敗につながってしまうでしょう。
そのほかには、塾業界の競争が激しくなっているということも、塾の倒産が起こる背景として考えられます。
塾は、初期費用がかかりにくいなどの理由から、参入しやすいビジネスといわれています。
そのため、子どもの数は減っているにも関わらず塾の数は増え続けているのです。
競合が乱立する中で少ないパイを取り合わなくてはいけないため、競争に負けてしまう塾は廃業を余儀なくされてしまいます。
関連記事>>塾経営が厳しい理由・成功させるポイント
塾の経営が失敗する理由
年々、塾の倒産件数が増えていく背景には、少子化やITの導入といった社会現象や、競合が増えやすいという業界の特性があることがわかりました。
このような背景を踏まえながら、塾の経営で失敗してしまう具体的な理由を5つ見ていきましょう。
失敗する理由①大手の経営手法をまねてしまう
塾の経営で失敗してしまう1つ目の理由は、大手の経営手法をまねてしまうということです。
大手の塾は、安定した集客を行い、長期的に収益を上げている成功例が多いかもしれません。
しかし、大手の塾がこのような経営を行える理由は、大手の塾であるというブランド効果や短期的に利益が出なくても経営が傾かない資金力があるためです。
もし、中小規模の塾が大手の経営手法を取り入れるとしたら、世間からの認知度が高く、資金力が豊富な塾が競合となるため、大変不利であるといえます。
失敗する理由②立地を考えないで開業する
塾の経営で失敗してしまう2つ目の理由は、開業する塾の立地を考慮しないということです。
塾の経営は教室の立地が生徒の数に大きく影響するので、真剣に検討をしなければいけません。
実際に、塾を選ぶポイントに学校や家からの通いやすさを挙げる方は多くいます。
そのため、保護者や学生に「よさそうな塾だ」という認識を持ってもらったとしても、通いにくい立地であれば、なかなか入塾には至らず集客が難しくなってしまうでしょう
失敗する理由③資金繰りの見通しが甘い
塾の経営で失敗してしまう3つ目の理由は、資金繰りの見通しが甘いということです。
塾の経営は、事業を運営していくためにさまざまな費用がかかります。
たとえば、講師の人件費や教室のテナント費、光熱費といった固定費や、集客のための広告費などがあげられます。
こういった費用が月にどの程度かかり、何人の学生が在籍していれば赤字にならないのかを詳細にシミュレートしなければなりません。
こういった資金繰りの見通しが甘いと経営は失敗してしまう可能性が高いでしょう。
失敗する理由④集客をおざなりにする
塾の経営で失敗してしまう4つ目の理由は、集客をおざなりにしてしまうということです。
塾の売り上げは、生徒からの月謝によって生まれます。
塾に生徒が集まらなければ経営が成り立たないため、集客をおざなりにしてしまう塾は経営に失敗する可能性が高くなるでしょう。
どれだけ教育カリキュラムが良くできていても、利用者が少なければ収益にはつながりません。
関連記事>>効果的な学習塾の集客方法
失敗する理由⑤講師を集められない
塾の経営で失敗してしまう5つ目の理由は、講師を集められないということです。
小規模の塾の経営者であれば、塾の運営と講師の業務を兼務する場合もあるでしょう。
生徒が少ないうちはその状態で経営していくことが可能かもしれませんが、ある程度生徒が増えてくると手が回らなくなるでしょう。
教育の充実と塾の経営を十分に行うためには、自身は経営に専念し、教育は専門の講師を雇わなければ、どちらも中途半端になってしまいます。
塾経営を成功させるコツ
自分の塾も失敗してしまうのではないかとご不安に感じられる方もいらっしゃるかもしれませんが、経営を失敗しないために大事なことは経営のコツを押さえることです。
そこでここからは、塾の経営に成功するための5つのコツを紹介します。
成功させるコツ①大手塾を意識しない
塾の経営を成功させる1つ目のコツは、大手の塾を意識しないことです。
確かに大手の塾は安定した収益を出していることから、経営手法を真似したいと考えるかもしれません。
しかし、失敗パターンで説明したようにブランドの看板と資金力があるからこそできる経営手法のため、中小規模の塾は大手の塾の経営は参考になりません。
そのため、中小規模の塾が成功するためには、大手の塾と差別化した経営手法が有効でしょう。
大手の塾との差別化を図るためには、中小規模の塾にしかできないことを行うことが重要です。
たとえば、大手の塾は生徒数が多く、生徒一人ひとりへの対応の時間は少なくなりやすい傾向にあります。
そのため、生徒一人ひとりへのサービスの質を高めることが有効です。
具体的なサービス向上の内容としては、生徒との十分な面談の時間の確保や、各生徒のための教育カリキュラムなどがあります。
中小規模の塾にしかできないサポートをすることで、大手の塾とは違う独自の魅力となり、大手の塾との差別化につながるでしょう。
成功させるコツ②立地を考慮して開業する
塾の経営を成功させる2つ目のコツは、立地を考慮して開業することです。
同じエリアに価格帯やサービス内容が近い塾が複数あった場合、生徒や保護者の判断基準となるのは通いやすさになるでしょう。
そのため、塾の立地は経営を成功に導くためには非常に重要です。
大手の塾は多くの場所からの生徒の集客を見込んで、駅の近くのテナント料が高い場所に教室を置く傾向にあります。
しかし、資金力や認知度で劣る中小規模の塾は、もっと小さい地域にターゲットを絞って立地を決めることが効果的といえます。
賃料が控えめな物件のなかから、生徒が通いやすく複数の学校から近い距離のものを選ぶとよいでしょう。
また、開業前にその地域の分析を行っておくことも重要です。
ターゲットとなる学校の在籍生徒数や学力の傾向などの情報収集を行うことで、その学校の多くの生徒のニーズにこたえられるようなカリキュラムを立てられます。
成功させるコツ③運営費を抑える
塾の経営を成功させる3つ目のコツは、運営費を抑えることです。
塾の経営で赤字とならずに経営を軌道に乗せるには、資金繰りが重要であるため、運営費はなるべく抑えられるように工夫をすることをおすすめします。
具体的な例を2つ見ていきましょう。
運営費を抑える方法①業務用コピー機を使わない
運営費を抑える1つ目の方法は、業務用コピー機を使わないことです。
塾では問題用紙やチラシの印刷などの大量の紙を印刷することが多いため、塾の開業の際には業務用コピー機の導入を検討することがあるでしょう。
しかし、業務用のコピー機はリース代がかかってしまうため、割高になってしまうことがあります。
開業してしばらくの間は、印刷する資料の枚数もそこまで多くないことが考えられるため、家庭用プリンターやコンビニの印刷機を使用することをおすすめします。
運営費を抑える方法②固定電話を使わない
運営費を抑える2つ目の方法は、固定電話を使わないことです。
運営費の中で、通信費も工夫次第では抑えられます。
たとえば、固定電話を使うよりも格安SIMのスマートフォンのほうが月々のコストは低くなる場合があります。
また、ネット環境も格安SIMと同時に契約することで抑えられる場合があるので、これらを使用していない方は一度調べてみると良いでしょう。
成功させるコツ④生徒の集客に力を入れる
塾の経営を成功させる4つ目のコツは、生徒の集客に力を入れることです。
塾の経営は、塾に通う生徒の数によって支えられるため、集客をして経営をしていくための生徒数を確保していくことが重要です。
代表的な集客の方法を3つ紹介します。
集客の方法①ポスティングを行う
1つ目の代表的な集客の方法は、ポスティングを使うことです。
ポスティングとは、チラシを各家庭のポストに投函することです。
ポスティングを行うことで塾の存在が地域の方の目に触れられ、認知度が上がりやすくなります。
関連記事>>生徒が集まる塾チラシの作り方
集客の方法②インターネットを使う
2つ目の代表的な集客の方法は、インターネットで情報を発信することです。
たとえば、SNSから情報を発信する、ホームページを作る、ブログを書くなど、多くの人に見てもらえるようにさまざまな方法で情報を公開しましょう。
関連記事>>学習塾の集客のためのWEBマーケティング戦略
集客の方法③キャンペーンや体験会を行う
3つ目の代表的な集客の方法は、割引キャンペーンや無料の授業体験会を行うことです。
これらは塾に対して興味付けを行い、塾への訪問者を獲得できる可能性があります。
授業体験会や面談を通して、塾の良さをアピールしましょう。
成功させるコツ⑤講師を定着させる
塾の経営を成功させる5つ目のコツは、講師を定着させることです。
講師を定着させることで、授業を講師に任せて自分は経営に集中することができます。
また、講師が優秀であれば、授業の満足度が高まり経営に良い影響を与えやすくなるでしょう。
講師の定着のためには、講師のモチベーションをあげてあげる、講師のための講習会を開くなど、講師が働きがいを感じられる環境になるように工夫を行うことが大切です。
たとえば、経営に影響を与えない範囲で講師の希望する給与を支給することや、講師のモチベーションを上げられるようにしっかりとコミュニケーションの機会を設けることなどが挙げられます。
学習塾の生徒が退塾する理由と防ぐ方法
こちらの記事では、塾生徒が退塾する理由と対処法についてご紹介しています。
塾を経営するうえで、生徒を定着させることは課題の1つです。
生徒の退塾を防ぐためには、その理由を把握し対策を立てる必要があります。
詳しく知りたい方は、ぜひこちらの記事を一読ください。
大手との差別化を図って失敗しない塾の経営をしましょう
いかがでしたでしょうか。
今回は塾の経営で失敗するパターンや成功するコツを解説しました。
中小規模の塾は、大手の経営方法を参考にしてしまうと、資金力やブランド力などの違いから失敗につながりやすいでしょう。
中小規模の塾の良さを生かし、生徒の定着を図りながら経営を進めていくことが重要です。
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